菅野美穂の演技が光る!7つの映画で魅せた異なる性格

菅野美穂の演技が光る!7つの映画で魅せた異なる性格
どんな役柄でもするどい感性の力で自分のものにしてしまう菅野美穂。今回ここにあげた出演作もバラエティに富んだものばかりです。精神を病んだバツイチ、女将軍、失恋から精神のバランスを失った恋人役。女医。・・・。それぞれの役柄には、多面的な要素を求められることに特徴があります。それらを難なくこなしてしまう菅野美穂。多くの監督からオファーが殺到するというのも頷けます。天性の女優なんですね。菅野美穂の繊細な演技が光る!7つの映画で魅せた異なる性格ご紹介します。



 

菅野美穂の演技が光る!
7つの映画で魅せた異なる性格

 


1、人は支え合って生きている―『パーマネント野ばら』


海辺の漁師町に幼い娘を連れて出戻ってきたなおこ(菅野美穂)。母親まさ子(夏木マリ)が経営する美容室「パーマネント野ばら」を手伝いながら日を過ごしています。町に1軒しかないこの美容室はこの町の女たち(なぜかことごとくパンチパーマをかけている)のいわば「たまり場」。そして、なおこの幼友達も浮気ぐせやギャンブル好きな男たちにふりまわされています。なおこは彼女たちを話を受け止めながら、一方では高校教師のカシマと密かに会うことに喜びを感じています。

ところが、ラストにそれらが逆転します。恋人カシマはすでに亡くなっており、自分は幻と付き合っていたのだとなおこが悟るシーンがあります。なおこは、「温かく見守られていたのは自分だった」と気づきます。幻のカシマと会っているときの愛くるしい表情から一転して、自らの狂気を自覚するときの菅野美穂の表情は見どころの一つです。
単なるドタバタではなく、この映画には「老い」や「死」といった重いテーマも自然に盛り込まれています。また、この原作は西原理恵子の同名人気漫画ですが、自分の原作作品には必ず「カメオ出演」する彼女。今回は意外な場面に登場しています。いずれにしても必見です。

 


2、普遍の愛のカタチが美しい―『大奥~ 永遠~ 右衛門佐・綱吉篇』


よしながふみの人気コミック「大奥」。その映画化第2弾が『大奥~永遠~右衛門佐・綱吉篇』です。男女逆転の大奥。運命の波に翻弄されながらも、必死に生き抜いた綱吉と、彼女に寄り添い続けた右衛門佐。テーマはその愛の顛末です。

この映画で主役を務めた堺雅人と菅野美穂は、この出会いからサプライズ婚へと発展。堺雅人のコメントに「菅野さんは押しても、押しても、どこまで突き刺さっているかわからない懐の深さを感じた。僕は、菅野さん(綱吉)という大きな木に巻き付くツルのような気持ちでいました」「ラブシーンでは、なけなしの男性ホルモンを振り絞ってやりましたが、菅野さんから『草食系ですね』と言われて、すごくショックでした(苦笑)。『え?結構、肉食系のつもりで演じたんですけど』と言ったら、ワッハッハと笑っていましたよ」などがあり、すでに菅野美穂にぞっこんだったとわかります。

一方の菅野は「不思議に思ったのは、環境や時代は全く違うのに、綱吉を演じていると今の時代の女性と通じるところが多かったこと。将軍であり、世継ぎを生まなければいけない立場であり、特に今のキャリアウーマンの葛藤や寂しさに似たものを持っている。目標があって何をすればいいか分かっているけれど、それだけでは満たされなくて、ささやかな癒やしが犬…。そういうことに気付いた」と鋭く指摘しています。

また演技面では無邪気・妖艶といった難しい役どころを魅力いっぱいに演じ、まさに「大木」の風格をあらわした菅野美穂です。そういう意味では同世代の30代、40代、また大奥という豪華絢爛な世界はどの世代にも楽しめそうですね。

 


3、あきらめないこと―『奇跡のリンゴ』


この映画は不可能とも言われた無農薬リンゴの栽培を成功させた青森のリンゴ農家、木村秋則さんの実体験を基にした作品です。主人公・秋則を阿部サダヲが、菅野美穂が妻・美栄子を演じました。
リンゴに使う農薬が原因で体に変調をきたした美栄子のために、極貧生活に追い込まれながらも11年の年月をかけて無農薬りんごの研究を続けた秋則の強さ、そして夫婦の絆が描かれます。木村さんの壮絶な苦労は2006年にNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも紹介され、多くの人々に勇気と感動を与えました。

両親が岩手県のリンゴ生産地の出身ということもあり、縁を感じたという菅野美穂。「農薬アレルギーのある妻を苦しみから解放してあげたいという愛情が無農薬リンゴ栽培のきっかけだなんて、なんと素直で優しいんでしょう。猪突猛進の主人を温かく見つめるのが妻の務めでは」と話し、その言葉どおり撮影現場では底抜けの明るさで阿部を支えました。

うまくいくことの方が少ない世の中、多くの人が支え合うことで、またあきらめないことで困難を乗り切っていくことに共感をおぼえるはずです。木村氏本人の、「一つのものに狂えばいつか答えは見つかる。とにかくあきらめないで」という強いメッセージが印象的!

 


4、生命に接近する―『ジーンワルツ』


映画「ジーン・ワルツ」は医師でもある海堂尊の同名医療ミステリー小説の映画化。本作では様々な問題を抱えている4人の妊婦が登場します。自分の胎児が自分では生命維持ができない「無脳症」であると判明した甘利みね子(27歳)。未婚で妊娠し、彼氏が失踪したため中絶を望む青井ユミ(20歳)。5年間の不妊治療をの末、悲願の妊娠をした荒木浩子(39歳)。顕微授精により双子を妊娠した山咲みどり(55歳)。

そして山咲みどりの妊娠には日本では禁止されている代理出産の疑いが掛けられます。山咲みどりは曽根崎理恵(菅野美穂)の母親で、理恵は妊娠できない体だったのです。紆余曲折ありますが、甘利みね子は数分間でも赤ちゃんと会いたいと無脳症の子を出産します。クライマックスは停電のさなか残りの3人が出産するシーン。全員無事出産し、理恵は、母山咲みどりが生んだ子を、自分が生んだと記録を書き換えます。

この映画が誰の心ににも迫るのは、もはや稀なことではなく、現在の女性誰もが抱えうる問題でもあるからです。主演の菅野美穂は「原作の曾根崎理恵は、自分の計画のために神経を張り巡らせて、自分の情熱を出さないようにしている、ある種恐ろしい女性ですが、映画の脚本では、彼女の葛藤や、心の揺らぎを膨らませて書いてあった。だから私は原作と脚本のいいところを結び合わせるつなぎ目になるように演じようと思いました」とコメントしています。映画では菅野演じる温かな曽根崎理恵に出会えるはずです。

 


5、ただ、あなたにここにいてほしい―『Dolls』


近松門左衛門の文楽『冥土の飛脚』がのっけから登場する。忠兵衛と梅川、2人の行きつく先は心中。それを予見させるかのように、3つの愛の物語が展開します。時代は現代。1話目、恋人(菅野美穂)を裏切って社長令嬢と結婚しようとした男(西嶋秀俊)の仕打ちに精神のバランスをくずし恋人は病院に収容されてしまいます。それを知った男は彼女を病院から連れ出しますが、以来、ふたりはあてどもなくさ迷い歩くことに。そしてある日、雪山で足を滑らせ2人は崖から転落してしまいます。

2話目、老境のヤクザの親分(三橋達也)は、ある日かつて恋人と逢瀬を重ねた思い出の公園に出かける。ところが、思いがけないことにそこには今も彼を待ち続ける恋人(松原智恵子)がいました。その後も彼は彼女と会いますが、ある日殺し屋にひかれてしまいます。

3話目、交通事故で左目を失い、芸能界引退をしたアイドル・春奈(深田恭子)のところに、熱心なファンが訪ねてきました。彼は誰にも顔を見られたくないと言う彼女のために自らの視力をなくしていました。春奈は彼を憶えていて彼は幸せな気分に浸りますが、それも束の間、交通事故で轢死してしまいます。

そんな北野武監督作品「Dolls」。日本の四季を繊細に表した美しい色彩。それらを背景に操られた人形のように憂いを表現する菅野美穂の演技はすばらしく、彼女は、この映画で第40回ゴールデン・アロー賞映画賞を受賞しました。ロシアでも2年間のロングラン上映。菅野美穂の卓越した演技力を世界に印象づけました。

 


6、誰だって守ってほしい。だから―『守ってあげたい!』


映画『守ってあげたい!』は、くじらいいく子の同名コミックを映画化したもの。主人公の安西サラサ(菅野美穂)は彼氏に浮気され、その腹いせと好奇心から陸上自衛隊に入隊してしまいます。配属された教育隊3班は、おちこぼれを集めた班でしたが、それぞれに個性豊かな、ある意味魅力的な面々。鬼班長の元で彼女たちは次第に意地を見せ始め、助け合い支え合って、ついには全員が任期を無事終了します。

人間はどんな人でも弱いところを持っています。口には出さないけれど守ってもらいたいと思っています。でも、仲間同士、分かりあえれば、そんな「守ってほしい」が強烈な「守ってあげたい!」に簡単に変わります。そんな変化が瑞々しい作品。ここでも菅野美穂のやさしさやはつらつとした演技が光ります。自衛隊の全面協力で撮影されているので、普段カメラが入らないところや、軍事訓練の様子などリアルです。また、主演の菅野美穂たちの制服姿は軍事マニアには必見です。

 


7、死なないという恐怖―『富江』


伊藤潤二のホラー漫画『富江』を映画化した作品です。菅野美穂演じる川上富江は、性格は傲慢ですが、長い黒髪、魔性を秘めた美貌の少女。彼女を目にした男たちは、たちまちその魅力のとりこになっていきます。そして、理由は様々ですが、彼らは例外なく次第に富江を殺したいと思うようになり、実際に手にかけてしまいます。しかし、富江は何度殺されても死にません。例え切り刻まれて肉片になっても、そこからまた元の姿かたちの富江に再生していきます。無数に増殖していく富江。そして富江に関わることで殺人という大罪を犯し人生を狂わせていく、これまた無数の男たち…。そうした富江にまつわる人間模様が描かれています。

清純派女優だった菅野美穂がホラーに出演ということで話題になりました。また、この映画には菅野美穂の迫真の演技のあらわす1つのエピソードがあります。本物っぽいゴキブリを彼女が袋から手づかみで取り出したというものです。実際にこれは衛生的な環境で育てられた本物のゴキブリでした。菅野美穂の役者魂が光る話ですね。

 

以上、菅野美穂の魅力が際立ったお勧めの映画です。特定の年代だけでなく、老若男女誰からも愛され好感度が高い菅野美穂。その演技力に敬意を表しつつ作品を楽しみたいですね。

 

まとめ

菅野美穂の演技が光る!
7つの映画で魅せた異なる性格

1、人は支え合って生きている―『パーマネント野ばら』
2、普遍の愛のカタチが美しい―『大奥~ 永遠~ 右衛門佐・綱吉篇』
3、あきらめないこと―『奇跡のリンゴ』
4、生命に接近する―『ジーンワルツ』
5、ただ、あなたにここにいてほしい―『Dolls』
6、誰だって守ってほしい。だから―『守ってあげたい!』
7、死なないという恐怖―『富江』