『エンゼル・ハート』知れば知るほどゾクゾクする9つの見所

『エンゼル・ハート』知れば知るほどゾクゾクする9つの見所
「エンゼル・ハート」は1987年制作のアメリカ映画です。ウィリアム・ヒョーツバーグの原作をもとに、映像と音楽と俳優が一体となって始めて可能な映画ならではの映画になっています。ミステリでもありオカルトでもあり、何よりも映像美に溢れた作品と言えるでしょう。主演はミッキー・ローク、対するにロバート・デ・ニーロの豪華キャスト。監督のアラン・パーカーの凝りに凝った演出とともに見ごたえのある作品です。

1955年のニューヨーク。しがない探偵のハリー・エンゼルはサイファーと名乗る男に人探しの依頼を受けます。戦前の人気歌手であるジョニー・フェイバリットを探すというその仕事を引き受けたハリーは、結果的に次々と殺人事件に巻き込まれていきます。ジョニーはどこにいるのか、サイファーは何者なのか。謎は重奏となりその映像と相まってショッキングなラストへと向かっていきます。映画をより楽しむために、ネタバレを含んだ9つの見所をご紹介します。



 

『エンゼル・ハート』
知れば知るほどゾクゾクする9つの見所

 


その1:原作


「エンゼル・ハート」の原作となる『堕ちる天使』が書かれたのは1978年。当時はそのあまりに禍々しい内容から廃刊運動まで起こりました。暴力的であり性的であり宗教的であり、すべてが大人向きの作品です。スティーブン・キングに「レモンド・チャンドラーが書いたオカルト」と言わしめたのも頷けます。そしてその原作を超えたと言われるほど見事に小説のイメージが映像化されているのです。

 


その2:監督


監督は1944年生まれのイギリス人アラン・パーカーです。「小さな恋のメロディ」の脚本家であり「ダウンタウン物語」で監督デビューした彼は、2作目の「ミッドナイト・エクスプレス」でアカデミー賞にノミネートされます。細部までこだわった演出と映像美はデビュー作からのものでした。音楽の使い方の上手さでも定評があり、この作品でもそれが存分に発揮されています。「これはホラー映画ではない」という監督のコメントからも、あくまで映像にこだわった監督の意志が伺えます。

 


その3:探偵


主人公であるしがない探偵ハリー・エンゼル、演じるのはミッキー・ロークです。当時のロークはアメリカのセクシーシンボルとまで言われていました。甘いマスクにどこか孤独な凶暴さを秘めたような彼の魅力は、映画の中でも遺憾なく発揮されています。この映画が制作された1987年にはなんと3本もの主演作品が公開されました。まさに旬の輝きをはなっていた時期のミッキー・ロークが素晴らしい演技を見せています。

 


その4:依頼人


依頼人ルイス・サイファーを演じるのはロバート・デ・ニーロです。もはや説明などいらない名優ですが、そのすごさはこの映画でもよくわかりますね。いつもながらの凝った役作りですが、長く伸ばした爪、大きな五芒星の指輪、その闇のような重厚感が映画全体に常に影のように不気味な空気を与えています。ゆで卵の殻をむいて食べる、それだけのシーンでこれだけすごい人はそういないでしょう。ルイス・サイファー=ルシファー(魔王)であることもあえて述べておきます。

 


その5:占い師


退廃的な香りをまとった謎めいた美女マーガレット。誰が演じるってシャーロット・ランプリングしかいないわけです。ジョニー・フェイバリットのかつての恋人だったという彼女は、結局心臓をえぐられるという殺され方をしてしまいます。シャーロット・ランプリングほどの女優がなぜこんなに簡単に殺されてしまうのかと思われるでしょうか。彼女の出演作に「さらば愛しき人よ」という作品があります。この「さらば愛しき女よ」の原作がレイモンド・チャンドラーなのです。シャーロット・ランプリングは醸し出すその雰囲気とともに、探偵と謎めいた美女というシチュエーションに対する監督のオマージュとしても必須の存在なのでした。

 


その6:ブードゥの巫女


ジョニーの娘でありブードゥ教の巫女でもあるエピファニーを演じているのがリサ・ボネットです。「ザ・コスビー・ショー」でアメリカのお茶の間のアイドル的存在であった彼女が、ホームドラマとはまったく違う演技を見せています。昼間にハリーと会った時のピュアとしか言いようの無い愛らしさと夜のブードゥの巫女としての異様さの落差。ハリーとのベッドシーンはなんとも凄まじく、この映画のすべてが込められているとも言えます。

 


その7:映像


「エンゼル・ハート」が後の映画に与えた影響の一番大きなものがその映像演出でした。最初に現れる黒人の死体がこの後の血と死を暗示します。繰り返し現れるイメージがどうしようもなく不安感を誘います。回る換気扇、アパートの螺旋階段、降下するエレベーター、タップダンス。それ自体は何ということもないものが繰り返されることで、理由もわからない不安が増殖されていくのです。光と影を強調したそのゴシックな映像が不気味な効果となって、ハリーとジョニーの光と影を破滅へと導く暗示となっています。

 


その8:音楽


映画の前半、ハリー・エンゼルが車を運転しながら下手な口笛を吹きます。それがすべての答えになっている、そんな音楽の使い方をしているのがこの「エンゼル・ハート」です。トレヴァー・ジョーンズの音楽はそれだけでも人の不安を掻き立てずにはおきません。一見明るいゴスペルでさえもどこか恐怖の対象になってしまうのです。監督アラン・パーカーの狙い通りに映像とともに脳内をひっかきまわす音楽が、より一層の恐怖を与えてくれます。

 


その9:ストーリー


落ちぶれた感のある大金には縁がなさそうなショボイ探偵が、どう見ても富豪の男から依頼を受けます。「なめくじを知っているか」「通ったあとに必ず跡を残す」と言うサイファーの言葉どおり、ジョニー・フェイバリットを探しながら彼の魂の跡を辿っていくハリー・エンゼル。そして探偵は誰に辿りつくのか。この映画の公開後、日本のミステリ小説の新人賞応募作品に類似のものが増えたそうですが、それも仕方ないと思わせる迫力が「エンゼル・ハート」には満ちています。

 

「エンゼル・ハート」の9つの見所をご紹介しました。どの見所も無視できないのがこの映画です。1987年度の雑誌「スクリーン」で読者投票4位になったのも納得できますよね。自分が自分であることに不安を抱いてしまうような、未知の分野を映画に初めて持ち込んだ記念碑的な作品です。

 
☆おすすめ映画☆
・ジョニー・ハンサム
・ケープ・フィアー
・さらば愛しき女よ
・メメント
・ヴィレッジ

 

まとめ

『エンゼル・ハート』
知れば知るほどゾクゾクする9つの見所

その1:原作
その2:監督
その3:探偵
その4:依頼人
その5:占い師
その6:ブードゥの巫女
その7:映像
その8:音楽
その9:ストーリー