東京タワー、知れば知るほど映画が見たくなる!9つの見所

東京タワー、知れば知るほど映画が見たくなる!9つの見所
「港区芝に大叔母の家があり、子供のころ、母に連れられて遊びにいきました。(中略)その家は坂のうえにあり、帰るとき、駅につづく長い坂の上から、正面に東京タワーが見えました。帰りはいつも夜でしたから、東京タワーはぴかぴか光っていました。それを見るとき、大人の人生がいいものに思え、私もはやく大人になりたい、と思ったものでした。 十九歳の少年たち(途中で二十歳になりますが)の物語を書こうとしたときに、それは東京タワーの見守ってくれる場所の物語にしよう、と思いました、東京の少年たちの物語にしよう、と。」(江國香織の小説『東京タワー』のあとがき)。

映画『東京タワー』はこの原作が狙ったように、東京タワーが見守ってくれる場所を舞台に二人の少年と年上の恋人たち、二組の恋が展開していきます。一組は詩史(黒木瞳)と透(岡田准一)、そしてもう一組は 喜美子(寺島しのぶ)と耕ニ(松本潤)。透と耕二は高校時代からの友達同士で、19歳。少年の面影を残し、瑞々しさの只中を生きています。彼らの恋の相手は互いに母親ほども歳が離れた女性たち。しかし彼らはどうしようもなく惹かれてしまうのです。彼らの恋のゆくえは…?映画『東京タワー』の見どころを9つのポイントで紹介します。



 

東京タワー、知れば知るほど
映画が見たくなる!9つの見所

 


その1、透の一途な恋


透と耕二はお互いを気遣う仲良しですが、性格は異なっています。母子家庭に育った透は孤独を愛する少年です。詩史との関係は、はるかに年上である詩史からの一方通行でした。透は詩史が好きだと言った本を読み、詩史が好きな音楽を聴く時間に浸りながら、彼女から誘いの電話がかかってくる平日午後4時をじっと待つ日々を過ごしています。しかし、そんな関係は長く続かず、やがて周囲に知られることとなります。ひと騒動起こり、透は詩史から別れを告げられたた後、傷心を抱えパリに留学します。

原作の結末は、詩史と一緒に生きる方法を模索して透は詩史のセレクトショップに就職することになりますが、いずれにしても恋は落ちたらそれまで。どこまでも一途な透の恋です。

 


その2、いつだって全力投球、耕二の恋


透の恋模様を心配する耕二は、かつて同級生の母親と関係をもち、その家庭を崩壊させた過去を持っています。狙った獲物は外しません。今も年相応の彼女がいますが、それに加えて、ほとんど偶然から付き合い始めた喜美子との関係も断てないでいます。兄弟もいて、人間関係にもやさしさとまめさを発揮する性格。「捨てるとしたら喜美子だ」と耕二なりに粋がって決めていても、なぜかそうならない葛藤を抱えています。

そして、耕二の恋は喜美子に捨てられるかたちで唐突に終息を迎えます。経験豊富な耕二ですが、この恋は彼が人生で初めて味わった本当の恋だったかもしれません。簡単じゃない、人を愛するって命がけ。しっかり学んだ恋だったかもしれません。

 


その3、自分を貫いた詩史


夫がいながら友人の息子との恋に落ちた詩史。究極の背徳の恋です。取り繕うことには限界があり、やがて詩史はすべてを知った透の母親に罵倒されます。残酷さを装って透を葬る詩史。でも若い男の子をもてあそんだわけではないことを、詩史は夫と別れてパリの透のところへ行くことで証明します。自分も透も対等なのだ、これは大人の恋愛なのだと彼女なりに筋を通したのです。

 


その4、かっこいい喜美子の錯乱


夫とも姑とも何となくズレを感じながら、毎日を送る主婦の喜美子。耕二と出会うことで、心身ともに解放され、どんどん魅力的になっていきます。捨ててしまおうと耕二が思っても離れがたいほどに。しかし喜美子はついには煮詰まった関係に錯乱し、耕二を切り捨てるように自ら離れていきます。耕二ととことん付き合うことによって、自分の生き方も捉えなおしたのかもしれません。年上の喜美子も切なくも得難い経験をしたのです。

ついでながら、喜美子を演じる寺島しのぶのフラメンコは圧巻です。1カ月しか練習していないとは思えない見事さです。

 


その5、母親は全力で我が子を守りたい


透の母親役は余貴美子が熱演しました。息子と詩史の関係を知って怒り狂います。当然でしょう。「息子の一番きれいな3年間を独り占めしたんだから、もう満足でしょ?」ってセリフが共感で泣けます。「子どもを生んでないあなたには分からないでしょうけど」「浅野さんがいなければ今の貴女は、いないのよ」って、このラウンドは完全に詩史の負けですね。でも、男の子はやがて母親を離れていく。それが分かるから余計切ないシーンです。

 


その6、男は哀しい


どこかふわふわとした印象の詩史に比べて、リアルだったのがその夫の浅野。岸谷五朗が演じました。詩史との関係を知って透を殴りますが、例え殴ったところで、最愛のパートナーの心はすでに自分から離れていることを感じ取っていたにちがいありません。相手はすでに自分が失ってしまっている若さや美しさ、そして一途な情熱を持っています。なすすべもありません。最後に赤ちょうちんで飲む姿に男の悲哀がにじみます。

 


その7、すべてが美しい


まず、イケメン俳優である松本潤と岡田准一が美しい。この撮影時、彼らも実際の耕二、透と同年代の20歳そこそこでした。贅肉のない美しい身体、折々みせる一瞬の切ない表情。すねていようが笑っていようが彼らは美しいのです。ストーリーがどうであろうと、ファンにとってはそれだけで大満足というものです。もちろんヒロインたちも十分に美しい。東京タワーの見える東京のきらめく夜景や、詩史の経営するセレクトショップ。高級マンション。軽井沢の別荘。汚い場面がまったくありません。映像を存分に楽しめます。

 


その8、偏見は持たないほうが楽しい


詩史は透と恋におちました。友人の息子で、詩史ははるか年上。「ありえない!」って思いますか? でもこうした恋物語を「ありえない」とか、「不倫もの」と片付けてはもったいない。つぶさに観察してみると、見えてくるのはごくごく普通の、その年齢相応の男と女の姿です。そう、彼らが惹かれあっているのは、その人間性も含めてなのです。だから偏見は捨てて、この恋物語を楽しまないと損かも、です。

 


その9、東京タワーに見守られて


この2つの恋は多様な価値観が混在する東京だからこそ成立するといえるほど。東京タワーはそうした都会の象徴、パリのエッフエル塔のようにとってもおしゃれに物語の中に配置されています。また、孤独な少年期を過ごした透にとっては特別な存在で、まるで人格をもっているかのようです。東京タワーに見守られるように紡がれた都会の恋の物語です。ちなみに、原作の『東京タワー』は韓国語、中国語などにも翻訳されました。なかなかの人気ですね。中国語タイトルでは『東京塔』。ま、違いないですけど…。

 

透と耕二が味わったほろ苦い初恋。人を愛することの切なさや苦しさを存分に味わいました。そして詩史と喜美子も彼らとの恋をとおして、新しい自分を発見します。恋をすることで、それぞれに成長した。そういうことでは、よくある「不倫もの」とは縁遠い物語です。原作を読むことをおすすめします。作者が意図したところがいっそう明確になるでしょう。観てから読むか。読んでから観るか。ちょっと迷いそうですね。

 

まとめ

東京タワー、知れば知るほど
映画が見たくなる!9つの見所

その1、透の一途な恋
その2、いつだって全力投球、耕二の恋
その3、自分を貫いた詩史
その4、かっこいい喜美子の錯乱
その5、母親は全力で我が子を守りたい
その6、男は哀しい
その7、すべてが美しい
その8、偏見は持たないほうが楽しい
その9、東京タワーに見守られて