『ハウルの動く城』映画にはない原作に隠された5つのメッセージ

『ハウルの動く城』映画にはない原作に隠された5つのメッセージ
『ハウルの動く城』は、2004年に公開されたスタジオジブリのファンタジーアニメーション映画。宮崎駿監督が、イギリスのダイアナ・ウィン・ジョーンズの著書『魔法使いハウルと火の悪魔』を原作に映画化したものです。後半に描かれる戦争のシーンなど、映画化するにあたり描かれた、原作にはない設定やストーリーは公開後も多くの関心をよんでいます。原作者も「活字で伝わる事がそのまま映像で伝わるとは限らない」と宮崎監督への尊敬の念を込めて語っているほどです。魔法使いの少年ハウルと少女ソフィーが繰り広げるアニメーションの中で、原作には描かれていて、映画には登場しなかった、隠されたメッセージをご紹介したいと思います。



 

『ハウルの動く城』
映画にはない原作に隠された5つのメッセージ

 


1:ソフィーに宿る魔法の力


原作のソフィーは、自分では気づかない魔法の力をもっています。それは、物に命を吹き込める力です。映画では、このソフィーの魔法の力は明かされませんが、いくつものシーンで隠れて使われています。クライマックスで、そのまま引き剥がせば死んでしまう、ハウルとカルシファーが助かるのも、このソフィーの魔法の力があったからです。

また、映画で老婆の姿へ変えられてしまったソフィーが、若い姿に戻ったりするのも、眠ったときや、素直な気持ちで行動しているときは、気付かないうちに自分でかけた魔法が解かれる原作からの引用が隠されています。原作では老婆の呪いをかけられた後は、始終老人としての体験を得て、ソフィーは自らの思い込みに気づき、ストーリーの最後で若い姿へと戻っていきます。

 


2.原作のハウル


原作のハウルは、戦争のためではなく、女の子をナンパするために、たびたび外に出かけていきます。映画ではソフィーを言い寄る兵隊から助けるハウルですが、原作では、ソフィーに言い寄ってきたのがハウルなのです。何時間も浴室に入り、化粧をし、香水をつけ、着飾るハウル。動く城でソフィーたちとの共同生活を始めても、ハウルは他の女の子にいくつもの恋をします。なんと、ソフィーの妹にまでも恋をしてしまうのです。映画の次第にソフィーの愛に目覚めていくキャラクター設定とは大分違います。原作では物語の最後の瞬間に、ハウルがソフィーに恋をします。人を愛するという意味に気がつくのです。

 


3.王室付きの魔法使いサリマンの異なる姿


ハウルの敵ともいえ、重要な役割で登場する王室付きの魔法使いサリマン。映画では女性で、ハウルの魔法の師として登場しますが、原作とは設定が異なります。原作でのサリマンは男性で、ハウルと同期の魔法使いなのです。ただ、原作には、映画のサリマンを思わせるような、フェアファックス夫人や、師匠として魔法を教えるペンステモン夫人という、映画には登場しない人物たちが描かれています。

 


4.宿的だった荒地の魔女


映画では、ソフィーたちと一緒に暮らし始める荒地の魔女。原作では一緒に暮らすことなどなく、最後までハウルの宿敵として戦い合います。原作の荒地の魔女には、自分が女王として君臨する野望があるのです。そして、若さを保ち長生きできる秘密の契約をハウルと同じように流れ星と交わしています。その上、王子や魔法使いのサリマン、ハウルたちの身体の使いたい所だけを寄せ集めて、自分につりあう完全な人間を作ろうとまで企んでいるのです。映画には出てきませんが、荒地の魔女を操る「火の悪魔アンゴリアン」というもっと恐ろしい敵も原作では登場するのです。

 


5.黒の扉の向うの世界


ハウルとソフィーが暮らす世界とは別に、黒の扉の向こうの世界「ウェールズ」が原作には描かれています。そこはハウルの家族が住んでいる現実の世界で、姉や、甥、姪が登場します。映画では、黒い扉の先は、「ウェールズ」ではなくハウルが向う戦場になっているようで、家族も登場しません。「ウェールズ」だけではなく原作で設定されている国は、映画では1つも述べられず隠された舞台となっています。例えば、原作でハウルとソフィーが暮らす舞台となるのは、インガリー国という架空の国。戦争は起こりませんが、軍隊をもった王国で隣国とは敵対関係にあります。

なかでも、もっとも異なる舞台が、ハウルの動く城の設定です。原作の城は、本当に浮遊している動いています。そして、ソフィーが初めて訪れた時には、狭くて汚い、まさしく掃除に没頭したくなるようなところだったのです。映画で老女になったソフィーが掃除婦となるのは、原作のそんな設定を活かしたものかもしれませんね。

 

いかがでしょうか。

他にも、映画にはない原作に隠されたメッセージは、数多くあります。というのも、原作には続編もあるからです。原作者であるダイアナ・ウィン・ジョーンズは、ハリウッド版のハウルの動く城を鑑賞して、とても喜んだそうです。宮崎駿監督が、原作のどこをどう演出したのか、考察しながら映画を鑑賞してみてはいかがでしょうか。

 

まとめ

『ハウルの動く城』
映画にはない原作に隠された5つのメッセージ

1:ソフィーに宿る魔法の力
2.原作のハウル
3.王室付きの魔法使いサリマンの異なる姿
4.宿的だった荒地の魔女
5.黒の扉の向うの世界