「オータム・イン・ニューヨーク」は2000年に公開されたアメリカ映画です。リチャード・ギアとウィノナ・ライダーという2大スターの共演と美しい映像で評判になりました。プレイボーイで雑誌の表紙を飾るような男と、少女の香りが残る溌剌とした女の出会いと別れを描いた作品です。
高級レストランの経営者で独身プレイボーイのウィル・キーン(リチャード・ギア)は、ニューヨークのセントラルパークでシャルロット・フィールディング(ウィノナ・ライダー)に出会います。人生を楽しむことだけを望んでいたウィルは、シャルロットに出会うことで人生の儚さと本当の意味を知るのでした。ニューヨークという大都会のもつ美しい風景を最大限に生かした「オータム・イン・ニューヨーク」の見所をご紹介します。ネタバレ有りですのでご注意ください。
『オータムインニューヨーク』
もっと楽しくなる!9つの見所
その1:ストーリー
ニューヨークで人気のレストランを経営し雑誌の表紙も飾る、スタイリッシュでハンサムな独身貴族のウィル。小鹿のような目をしたいたずらっ子のようなシャルロット。2人は出会い恋をしてと、ここまではありきたりなストーリーです。しかしシャルロットが難しい神経芽腫にかかっていることを知ってから、ウィルははじめて自分がどれだけ人を傷つけてきたのか気づきます。自分にできることは何なのか、本当に愛するとはどんなことなのか。絵画のような映像に綴られた詩のような物語です。
その2:監督
監督は1961年中国上海生まれの女優ジョアン・チェンです。女優として一番有名なのは「ラスト・エンペラー」で溥儀の皇后となった婉容役でしょう。監督としての作品は「シュウシュウの季節」とこの「オータム・イン・ニューヨーク」の2本だけですが、それぞれに鮮烈な印象を残しました。この作品にも東洋人ならではの感性が存分に発揮されています。
その3:ウィル・キーン
ハンサムでお金持ちのダンディな中年男ウィル・キーン。このての役はたいていこの人になってしまいそうな俳優がリチャード・ギアです。「プリティー・ウーマン」の実業家もイメージぴったりでしたね。この作品のウィル・キーンは決してカッコいい役ではありません。自分の楽しさだけのために沢山の女性を傷つけ泣かせておきながら、それに気づかない子どもが大きくなっただけの男でした。その彼が本当の愛を知った時、そして助けてくれたのがまともに向き合ったこともない成長した娘だった時、彼は自分のみっともなさを認めることができました。そうしてやっとウィルは大人の男になったのでした。そんなウィルの姿が似合うのは、やはりリチャード・ギアならではでしょう。
その4:シャルロット・フィールディング
大きな目で明るく笑うシャルロット。余命1年と言われながら自分の人生を恋にかけていきます。元気でユニークなショート・カットの彼女を演じるのはウィノナ・ライダーです。1971年生まれのウィノナはこの映画に出演する頃にはアカデミー主演女優賞にノミネートされる堂々の大スターになっていました。けれどシャルロットを輝かせているのはスターのオーラではなく、若い娘の持つ命のきらめきでした。生き生きと時には妖精めいたシャルロットに、ウィノナ・ライダーはこれまたぴったりの配役でした。
その5:ジョン
ウィルの相棒で良き家庭人であるジョンを演じているのがアンソニー・ラパーリアです。恋愛をゲームとみなして女性を傷つけることを意に介さないウィルと、妻と子ども達を愛する優しいジョンが両極端な成功者として存在しています。最初の頃、家族を大切にしているジョンをウィルはどこかシニカルに見ています。けれど家族を愛し家庭を大切にしているあまりカッコよく見えないジョンこそが大人の男であり、無責任に恋愛を楽しんでいるウィルは実は無責任なカッコ悪い男だったのだと映画は気づかせてくれます。人のいいジョンを演じて地味にいい味を出しているアンソニー・ラパーリアはオーストラリア出身。トニー賞エミー賞ゴールデングローブ賞を受賞している達者な俳優さんです。
その6:リサ・テイラー
大きな目が印象的なウィルの娘リサを演じるヴェラ・ファーミガ。シャルロットと変わらない年齢でありながらとても落ち着いていて、無責任な父であるウィルを助けてくれます。自分の感情を我が娘にぶつけてしまい、余計に落ち込んで去ろうとする父であるウィルに「あなたを助けたい」と言ってくれるリサ。彼女の存在がシャルロットとはまた別の意味でウィルに自分自身を気づかせました。シャルロットを失った後リサとその赤ちゃんと一緒にボートに乗るウィル。それは傷つき失うことを知ってやっと大人になれた男の姿なのでした。
その7:ニューヨークの風景
ニューヨークを舞台にした映画はたくさんあります。けれど「オータム・イン・ニューヨーク」ほどにニューヨークの美しさを映した映画は無いでしょう。そびえる摩天楼やオシャレなレストラン、セレブの集うパーティなどももちろんニューヨークです。そして同じくらいに森のように木々が茂るセントラルパークや白一色に街が埋まるクリスマスもニューヨークなのです。黄色い葉が絨毯のように敷き詰められたセントラルパークの美しさ。雪一色のクリスマスシーズンに映えるモミの木の緑。ニューヨークは大都会であると同時に、美しい自然を有した街なのだと教えてもらえます。
その8:撮影監督
「オータム・イン・ニューヨーク」の撮影監督はクー・チャンウェイこと監督と同じく中国出身の顧長衛です。「赤いコーリャン」「覇王別姫」の撮影監督と言えばおわかりいただけるでしょうか。今回も絵画のような風景をスクリーンに広げてくれます。西洋的な風景にどこか東洋的な柔らかさをまとった映像がこの映画の大切な見所です。
その9:モチーフ
シャルロットを取り囲むモチーフは鳥に集約されます。中でも最初に目に留まるのは折り紙の鶴です。繰り返し作中に出てきてその存在を観客に気づかせますが、日本人ならば一目で意味がわかるモチーフですよね。常に聞こえる小鳥の声も飛び立つ鳥たちも、窓から離れて舞い上がる鳥の目でウィルを眺めるようなショットも、繰り返し鳥のモチーフが現れます。そして最後の最後にも、やはり鳥が登場します。とても東洋的なイメージを、監督のジョアン・チェンはニューヨークを舞台に持ち込んだのでした。
いかがでしょうか。
「オータム・イン・ニューヨーク」の見所を9つのポイントでご紹介してみました。単なる恋愛映画ではなく、東洋人の監督が西洋人のラブストーリーを描いた隠喩に富んだ作品です。1人で観るもよし、愛する人と観るもよし、現代ニューヨークの寓話を堪能してください。
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まとめ
『オータムインニューヨーク』
もっと楽しくなる!9つの見所
その1:ストーリー
その2:監督
その3:ウィル・キーン
その4:シャルロット・フィールディング
その5:ジョン
その6:リサ・テイラー
その7:ニューヨークの風景
その8:撮影監督
その9:モチーフ