『ウォーターホース』俳優たちの知られざる9の裏話

『ウォーターホース』俳優たちの知られざる9の裏話
2007年制作のアメリカ映画「ウォーターホース」。「ロード・オブ・ザ・リング」の製作スタッフが参加していることでも話題になりましたね。1人の子どもと1匹の不思議な生き物とのふれあいと友情を描いた心温まる作品でした。子どもの持っている不思議を不思議として受け入れる力と、スコットランドに今なお生きる伝説の不思議が持つ力が、見事なCGとともに物語を紡いでいました。

けれど特筆すべきは製作スタッフだけではありません。それぞれの人物を演じた俳優陣も素晴らしい演技を見せてくれました。「子どもと動物には勝てない」とはよく言われることですが、子どもとCGだけではない、俳優陣にまつわる9つの裏話をご紹介します。ネタバレ部分もありますが、より一層「ウォーターホース」を楽しんでいただけるエピソードをご覧ください。



 

『ウォーターホース』
俳優たちの知られざる9の裏話

 


その1:撮影初日


「ウォーターホース」の撮影は主にニュージーランドで行われました。撮影場所となったワカティプ湖には、湖底に巨人が眠っているというマオリ族の伝説があります。それもあってか、撮影初日スタッフはマオリの伝統的なお祈りに参加しました。そして監督とアレックス・エテル、エミリー・ワトソン、ベン・チャップリン、デヴィッド・モリッシーに、不運から身を守るための緑の石が贈られました。緑の石とはおそらくポウナム、つまりヒスイですが、それは「人から贈られてこそお守りの力が発揮される」お守りです。主演の4人の俳優さんも、ジェイドの力を得て演技に一層拍車がかかったのではないでしょうか。

 


その2:アレックス・エテル


主人公であるアンガス・マクマテルを演じたのはアレックス・エテル君でした。イギリスのマンチェスター出身で撮影時は若干13歳。それでも堂々の演技です。それもそのはず、2004年のイギリスのドラマ映画「ミリオンズ」にオーディションで選ばれ、10歳にして放送映画批評家協会賞にノミネートされています。お父さんがいなくなった穴を埋められない少年の孤独感と、不思議な生き物と友達になる少年の無垢さを見事に演じていました。

 


その3:エミリー・ワトソン


主人公の母アン・マクマロウを演じるのがエミリー・ワトソン。アカデミー主演女優賞に2度もノミネートされた、ロンドン生まれの名女優さんです。今回も戦時下で夫を失いつつ、その穴を抱える子どもたちを案じる母親を見事に演じていました。子どもの寂しさを理解する優しい母の部分と、子どもの不思議は理解できない普通の大人の部分が最後に融合するところはステキでしたね。馬繋がりなのかどうか、この「ウォーターホース」の4年後には「戦火の馬」(原題はWar Horse)に出演しています。

 


その4:ベン・チャップリン


どこか謎めいて、でも不思議を不思議として理解できる大人ルイス・モーブリーを演じています。最初はアンガスに嫌われていたものの、最終的には一番の理解者になります。それは彼が生死をさまよう経験をした大人だったからでした。敵か味方か何者なのか、なんともあいまいな存在を不思議な存在感で演じていました。ロンドン出身で映画と舞台の両方で活躍していますが、2004年にはトニー賞にノミネートされた実力派です。

 


その5:デヴィッド・モリッシー


融通のきかないイギリス軍のハミルトン大尉を演じたデヴィッド・モリッシー。リバプール出身の俳優さんです。映画だけではなくテレビドラマにも多数出演しており、そちらで見たことがあるという人も多いかも知れませんね。強引で頭はやや硬いけれど悪い人ではないハミルトン大尉がよく似合っていました。「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」ではエミリー・ワトソンと共演もしていました。

 


その6:ブライアン・コックス


老人となったアンガスを演じたのがブライアン・コックスです。スコットランドの出身で、子ども時代に不思議に出会ったアンガスが、そのまま年をとったことがよくわかる老人を演じていました。他の映画では悪役を演じることも多いようですが、ローレンス・オリヴィエ賞を2度も受賞していることでもわかるとおり、正統派の役者さんです。

 


その7:リアリティ


主だった5人の役者さんについて、共通点に気づかれたでしょうか。そう、5人ともイギリス出身なのです。アメリカ映画なのに主演クラスが全員イギリス人なのは何故なのか。それはリアリティのためです。現実を舞台にしたファンタジー映画にとって一番大切なのはリアリティです。現実がより現実らしいからこそ、そこに起きる不思議な出来事が輝きます。第二次大戦中のスコットランドを舞台にネッシーの映画を作るならば、そこにいる人々はイギリス英語を話さなければなりません。日本人にはあまりわからないことでも、英語圏の人には失笑モノになってしまいかねません。それを知っていればこそのキャスティングの妙でした。

 


その8:カナヅチ


主人公のアンガスは溺れかけた経験のために泳げない子どもでした。そして実はアレックス・エテル君本人もあまり泳げない子だったのです。しかしながら撮影にはたくさんの水中ショットがありました。スタントマンに頼らずに自身で演じるために、彼は何週間も水泳の練習をしたそうです。そんな努力の甲斐あって、最終的には水中で45秒間も息を止めていられるようになりました。クルーソーと楽しく遊ぶうちに水への恐怖を克服したアンガスの気持ちが、演じるアレックス・エテル君本人には誰よりもよくわかったのかもしれません。

 


その9:最後にプリアンカ・キー


アンガスの姉カースティ・マクマロウを演じたプリアンカ・キー。日本ではほとんど知られていないのではないでしょうか。彼女はニュージランドの女優さんで日本での公開作はこの「ウォーターホース」のみのようです。主要な役はほとんどがイギリス出身者な中で、何故ニュージーランド人の彼女が姉を演じたのでしょうか。

映画を観ればわかっていただけますが、彼女はとても母親役のエミリー・ワトソンに似ているのです。そっくりとかではなく、実の親子であればこんな感じだろうなと思わせる似方です。アンガスがクルーソーを隠して飼っていることを最初に知ったのはカースティでした。けれど彼女はそのことを母のアンに言わず、アンガスと不思議を共有します。

大人である母には理解できなかったことを、彼女は理解できたのでした。それはつまり、母のアンも子ども時代であったら理解できたことを示唆しているのです。「ウォーターホース」はファンタジー映画であると同時に子どもの成長物語でもあります。そして真の大人とは子どもの不思議を理解できる人、自分が子どもだったことを忘れない人なのだとも訴えているのです。

 

いかがでしょうか。

俳優さん達の裏話を通じて「ウォーターホース」を紹介してみました。演じる人を知っていればより楽しめることも多いでしょう。ふむふむと思いながら映画を観て、自分が子どもだったことを思い出してみてください。

 

☆おすすめ映画☆
・ナルニア国物語
・ミリオンズ
・戦火の馬
・河童のクゥと夏休み
・ロード・オブ・ザ・リング

 

まとめ

『ウォーターホース』
俳優たちの知られざる9の裏話

その1:撮影初日
その2:アレックス・エテル
その3:エミリー・ワトソン
その4:ベン・チャップリン
その5:デヴィッド・モリッシー
その6:ブライアン・コックス
その7:リアリティ
その8:カナヅチ
その9:最後にプリアンカ・キー